よくドラマとか、小説とか、アニメとか、漫画とかであるじゃないですか。なんか良くわからないけど、見知らぬ女の子と二人っきりになって、なぜかその子と衝突しちゃって、当人達からしてみれば不可抗力な出来事なのだけど、第三者からしてみたら、抱き合っているとしか思えない状況みたいな。でもって、どうしてだかその現場を気になるあの子に目撃されちゃって、言い訳できないみたいな。「こ、こ、これは、ち、違うんだ!」みたいな。そういうお約束というか、ベタベタなシチュエーション。
そういうのって、僕は今までフィクションでの出来事だとばかり思ってたんスよ。誰かが考えて、それがベタとして広まって、お約束として現代に至る、みたいな。だって、あまりにもリアリティがなさすぎるし、そんなことが現実として起こったら面白すぎますものね。
しかしながら、現実とは時にしてフィクションよりもヘンテコリンな出来事が起こるわけであり……。それは僕のような矮小な人間であっても、例外ではなかったのです。
――そう、あれは家族のメンバーがスキー旅行に出かけ、僕が家でお留守番をしていた時のことでした。
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当日は仕事があったので、留守番することになった僕。僕は仕事から帰ってくると、家の掃除、洗濯、食事の準備などの家事を一通りこなし、リビングでまったりとしていました。テレビを観て、みかんを食べ、休息していたのです。
そしたらですね「ワオーン」と、飼い犬であるムスターファが鳴き始めるわけなんですよ。そりゃもうワンワンと鳴くわけです。僕は近所迷惑になるからいい加減にしなさいとムスターファを叱りつけたんです。しかしながら、ムスターファに人語が通用するわけはなく、一向に鳴きやまない。
これはどうしたものか――とマンダムポーズをとっていると、頭上に電球がピカリと点灯しました。そうだ、そうだ。エサだエサエサ。エサをやっていなかった。そりゃあ、ムスターファも怒る筈だよ。うんうん、メシがなかったんだからね。そう言われてみれば、ムスターファの面倒も頼まれた気がしていた。世話をよろしく、とかナントカ。いやはや、すっかり忘れていたわ~。
というわけで、ドライペットフードをムスターファへと与える僕。お手もお回りもお座りもチンチンもしないムスターファだけど、なぜか「待て」だけは100%するムスターファ。別に待てをさせる理由なんて何もないのだけど、唯一反応する命令なので取り敢えず待てをかける。そして、メシを食わせる。
と、そこであることに僕は気付いたわけですよ。なんだか、犬小屋の周りが散らかっているわけです。髪の毛が散らばっていたり、汚れていたり、糞尿が散らばっていたりと、なかなか汚い状況になっていた。
ここで僕に何かのスイッチが入ったわけです。ちょこっと、この辺りも綺麗にしておこうと。部屋を掃除し始めたら、細かいところまで気になりすぎて、結局は大掃除になってしまった現象、と言えばわかりやすいでしょうか。
そんなこんなで、僕はムスターファの小屋廻りを掃除し始めたわけです。ゴミを拾い、家を洗い、糞尿を片づける。普段はまったくこんなことしないんですけどね。なんだかわけのわからないスイッチが入ってしまったというわけです。
さて、あらかた掃除も終わったところで、僕はあることに気付きました。ゴミは捨てればいいけれど、この糞の後始末はどうすれば良いのだろうか、と。燃えるゴミとして出せば良いのか? それとも燃えないゴミなのか? はたまた、他の方法が存在するのだろうか? と。
うーん……と考えている内に気付きました。そうだ、庭に埋めてしまえばいいんだと。臭いモノには蓋をしろ、と言うではないか。穴を掘って、そこに糞を放って埋めてしまえばいい。そうすれば土の栄養にもなるし、ゴミにもならない、片づけにもなる、まさにいっせきさんちょう!
というわけで、僕はスコップを持ち出して、穴をザックザックと掘り始めました。上にも書きましたけど、普段ならこんなことまったくしないんですけどね。なんかスイッチが入ってしまったとでもいいましょうか。うん、そんな感じなわけです。
ザックザックと。一度掘り始めてしまうと、穴掘りというのもなかなか楽しいもので、「昔奴隷だったユダヤ人が、穴を掘って穴を埋めるという作業を延々と繰り返しさせられた」ということを思い出したりしながら、ガシガシと掘っていたわけですよ。ガシガシ、ガシガシと。
――そしたら、突如そこに妹が出現。「何やってんの?」
本当に何をやってるんだろうね。そういえば、妹もスキー旅行には未参加だったっけ。まぁ、それはどうでもいいや。
そこで僕は気付いた。客観的に見ると、今の僕の行動はおかしい。普段、土いじりなんてまったくしない僕が、庭で穴を掘っているなんて、どう考えてもおかしすぎる。
「ビックリした。泥棒かと思った」
何も言い訳できない。
はてさて、僕はどういう経緯で穴を掘り始めたんだっけかな、と。記憶の糸をたぐり寄せてみるのだけど、良い答えを導き出すことはできませんでした。なんで、俺は穴を掘っていたんだろう。ふと、冷静になって考えてみるのだけど、行動に整合性を保てない。
「ちょっとまて、これは違うんだ」
何が違うんだかまるでわからなかった。客観的にみて、どう考えてみても、これは奇行にしか映らない。自分で自分の行動の正当性を説明できない。「○○だから、穴を掘っていたんだよ」、この○○を説明できない。「犬のうんこを埋める為に、穴を掘っていたんだよ」、なぜに今、この時間にそんなことを? 奇怪すぎる。普段からアクティブならまだいい。しかし、そんなことは生まれてこの方したことがなかったのだ。我ながら頭おかしいとしか思えなかった。
刹那、近所に響いたのはあの忌々しい女の笑い声。「ひゃぁああっ、はっははぁぁ~!」とその憎たらしい笑い声が僕の脳内に響いた。ベアトリーチェか。しかし、それでも今の状況をうまく説明することはできなかった。だって、
僕はその場に項垂れた。そして、どうしようもないくらいに脱力した。
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教訓 :人間には理論的に説明不可能な行動をとってしまう時がある。
教訓2:自分で自分のことを認めた時、新たな道が開かれる。